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朝から降り始めた雨が、放課後になっても容赦なく地面に降り注いでいる。
いつ晴れるかもわからない、どんよりとした分厚い黒雲が大空を覆い、まるで私の心を映し出しているようだった。
「桐生君……遅いな……」
学校の校門脇のフェンスに手を掛けながら、ふぅっとひとつ溜め息をつく。
時間は現在午後4時過ぎ。
午後の授業は3時半には終わっているから、帰宅部である桐生君ならば特に用がなければもうとっくに帰路についている時間だ。
もしかして、先に帰っちゃったのかな。
考えてみれば、昨日あんなことがあったばかりだもん。約束すっぽかされても仕方ないよね……。
昨日の悪夢のような出来事が、再び脳裏に蘇る。
結局昨日はあの後、1時間程保健室で休ませてもらってから学校を早退した。
気掛かりなことも心残りなことも、もちろんたくさんある。
しかし、一度心の整理をちゃんとしたかったため、今はとにかくゆっくり休みなさいという保健の大内先生の言葉に従うことにしたのだ。
それから一日、考えて考えて考えて……。
このままではやはりいけないと思った私は、桐生君に“今日一緒に帰ろう”というメールを送ったのだ。
まぁ、直接口で言えないあたりが、相変わらず私のヘタれっぷりを物語っているような気もするけれど……。
それから1時間程して桐生君から返ってきたのは“わかった”と一言だけ記された短文メール。
その素っ気ないとも思える文章のメール画面を開きながら、私は再び大きな溜め息をついた。

