いまいち反応が薄い私に、更に麻優が興奮気味に追加情報を提供してくる。
「桐生君は単に顔がいいだけじゃなくて、スポーツ万能だし頭もすごくいいんだよ?
一部の女子の間では、ファンクラブまであるらしいんだから」
「ファ、ファンクラブ!? マジで!?」
「うん。桐生君は特定の女の子とは誰とも付き合わないって噂だから、さっき私達に絡んできた女の子達も、きっとファンクラブの子達なんじゃないかな」
「うっわ、なんだか漫画の世界みたい」
「あはは、だよね……」
半ば呆れ気味に互いの顔を見合わせる私と麻優。
目が合った瞬間、思わず二人ともぷぷっと吹き出してしまった。
「んも~麻優ってば笑い過ぎだって」
「な、七瀬こそっ」
なんだかやけにおかしくて、なかなか笑いがおさまらない。
しばらくそうしてクスクスと笑い続けていると「センパ~イ、何やってるんですか~っ」と、体育館の入り口の方から私達を呼ぶ後輩の声が聞こえてきた。
「いっけない! 部活に行かなくちゃっ」
後輩の声でようやく笑いが止まった私と麻優は慌てて立ち上がり、先程のことなどもう気にも留めずに体育館へと向かったのだった。
まさかこの一件がのちにあんな事態を招くことになるとは、このときの私はまだ知る由もなかった……――

