「それにしても」と、改めて先程の一件を思い返し眉をしかめる。
「ほんっと柄が悪い連中だったよね。あんなヤツら、同じ学校にいたんだ」
「えっ? もしかして七瀬、桐生君のこと知らないの?」
「『桐生君』?」
「そう、二年C組の桐生冬真(きりゅう とうま)君」
目をパチクリさせながら頭に『?』マークを浮かべている私を見て、麻優が信じられないという顔で目を見開いた。
「えっ? えっ? 何だっけ、その桐生なんとかって人、そんなに有名人なの?」
「七瀬ってば本当に知らないの!? 」
「う、うん……」
未だに信じられないといった様子で私を見つめる麻優。
「桐生冬真君っていえば、この学校の生徒なら誰もが知ってる校内一のモテ男兼プレイボーイじゃない」
「へ~……モテ男……」
全然知らなかった……。
確かに、よくよく思い返してみれば整った顔をしていた気もしなくはないけれど……。

