キスから始まる方程式



バリッ!



「え……?」



しかし次の瞬間、私が伸ばした手より一瞬早く、何者かの腕が写真を白い用紙ごと黒板から引き剥がした。



誰っ!?



出しかけた手を慌てて引き寄せ、写真を奪い去った腕の主へと視線を向ける。


すると……



「っ!?」



私の視界に飛び込んで来たのは、怒りに顔をクシャリと歪ませた幼なじみの翔の姿だった。



翔……っ



制服姿の翔が、そのまま写真をものすごい力で握り潰している。


先程会った時は朝練の体操服姿だったから、言葉通り部室で制服に着替えてから教室にやって来たのだろう。


けれど



ど、どうしようっ……!



無言で激しい怒りのオーラを放ち続ける翔に、かける言葉がみつからない。


眉間に刻まれた深いシワと額に浮かんだ青筋が目に入り、余計に近付きがたい空気が漂っていた。



翔のこんな姿、今まで見たことない……。

でも、私のせいで迷惑かけてるんだから私がなんとかしないと!



とりあえず自分を落ち着かせるために、一度心の中でゆっくり深呼吸をする。



「あの……かけ……る!?」



ビリッビリビリビリッ



だがしかし、意を決して絞り出した私の言葉を待つことなく、問題の写真は翔によって粉々に引き裂かれたのだった。