キスから始まる方程式



「ごめんっ、ちょっと通して!」



人込みを無理矢理かき分けながら、騒ぎの中心へと進んで行く。



もしかして……もしかすると……



ドクン、ドクンと全身の脈が不穏に騒ぎ出す。


先程の胸騒ぎが、私の中で予感から確信へと着実に変わっていった。



そして、ようやく開けた視界の先に私を待ち受けていたのは



「なん……なの……これ……っ」



真っ白な用紙に貼られた一枚の写真……私と翔が写されたものだった。



なんで私と翔の写真が……!?



半パニック状態の頭で、写真を前に呆然とする私。


騒ぎの源を前にしても、何が何だかさっぱり理解することができない。



やっぱり騒ぎの原因は、麻優じゃなくて私だったんだ。



ふと、先程の麻優の様子が脳裏に蘇る。


優しい麻優は、親友の私のことを心配してあんなにも動揺していたのだろう。



麻優……。



そんな親友の思いに、おもわず胸がジンと熱くなる。


けれどもうこれ以上麻優に、私のせいでそんな辛い思いはしてほしくない。


そう思いようやく我に返った私は、軽くかぶりを振り停止した思考を無理矢理再稼働させた。



不自然に汗ばんだ拳をギュッと握りしめ、自分で自分を奮い立たせる。


そうして今の状況を収束するべく、目の前の写真に改めて向き直ったのだった。