キスから始まる方程式



「な、何だったのいったい……」



嵐のような出来事に、口をポカンと開けたまましばらく呆然と立ち尽くす私。



「七瀬……?」

「!」



背後から聞こえてきた、怯えたような麻優の声にふと我に返った私は、慌てて麻優のもとへと駆け寄った。



「ごめんっ、麻優っ。大丈夫!?」

「うん、ちょっとお尻打っただけだから、なんてことないよ」

「ケガは!? 足とか捻ったりしてない!?」

「うん。大丈夫。どこも痛くないよ」

「よかった~……」



張り詰めていた緊張の糸が一気にほどけ、へなへなとその場にしゃがみ込む。


そんな私を見て、クスクスと麻優が笑いながら呟いた。



「七瀬ってばやっぱりすごいよ。私なんて怖くて何もできなかったもん」

「へっ? そ、そうかな」

「うん! すっごくカッコよかったよっ」



普通ならば『カッコイイ』なんて言われてもちっとも嬉しくないけれど、麻優からそう言われるのだけは特別。


大事な親友から言われると、なんとも嬉しい気持ちになってしまうのだ。