* * *
「はぁっ……」
登校する生徒で賑わう朝の道をひとりぼんやりと歩きながら、本日何度目かの溜め息が口からこぼれ落ちる。
昨日はあれからお母さんと再び落ち合い病院へ行き、先生からももう大丈夫とのお墨付きをもらうことができた。
あんなことさえなければ、今頃嬉しくてステップのひとつでも踏んでいるところなのだが……。
夕べは昨日の工藤さんの言葉がずっと脳裏にちらつき、ほとんど眠ることができなかった。
―― キスマークに胸のホクロ
それを工藤さんが知っているということがどういうことを意味しているのか、さすがの私でもわかる。
つまりこれってば……そーゆーことだよね……。
―― フタリハ、カラダノカンケイダッタ――
わかるけど、でも……。
私は寝不足で赤く充血していた目をギュッと閉じ、疑念を振り払うようにブルブルとかぶりを振った。
桐生君は私に嘘をついてたの?
クラスの女の子が話してた、二人が付き合ってたっていう噂は本当だったっていうこと?
工藤さんと桐生君は、そんなことまでするような仲だったの?
耳を塞ぎたくなるような信じがたい話ばかりが執拗に私の心につきまとい、いくら打ち消そうとしても一向に消えてくれない。
今度こそ桐生君の言葉を信じようと固く心に誓ったはずなのに、あの時の自信は今はもう砂の城のように崩れかかっていた。

