なんで……っ。
突然の工藤さんの豹変ぶりに、まったく思考が追いつかない。
しかしいくら瞬きをして彼女を見返してみても、友好的とさえ思えた柔らかな空気は、今はもう微塵も感じられなかった。
「べつに隠さなくてもいいじゃない」
「べつに隠してなんか! そ、そもそもなんで私が工藤さんに、そんなこと話さなくちゃいけないのっ?」
「え~? いいじゃない、減るものじゃないんだし~」
ケタケタと嘲笑いながら、尚も工藤さんが言葉を続ける。
「もしかして七瀬ちゃんて、まだ冬真とお子様な関係なワケ~?」
「っ!」
ズバリ正解を言い当てられ、バカ正直な私の顔はたちまちカッと熱くなってしまった。
「うっわ、図星~っ?」
「……」
「へ~? あの冬真がまだとはね~、ふ~ん」
なにやら意味ありげにニヤつきながら、愉しそうに私を見つめてくる。
私もいつもの勢いで言い返せばよいのだが、なぜだか工藤さん相手だとまるで蛇に睨まれた蛙のように萎縮してしまい、うまく言葉を繰り出すことができない。
「じゃあそんなお子様な七瀬ちゃんに、いいこと教えてあげよっかな」
いいこと?
途端に私の心が警笛を鳴らす。
この状況で知らされる“いいこと”など、どう考えても私にとって有益なものとは思えない。
これ以上無駄に心を掻き乱されたくなかった私は
「教えてくれなくていいからっ」
と一言だけ言い捨て、急いでその場から逃げるように駆け出した。

