「♪~♪♪♪~」
ビクッ
突然廊下に鳴り響いた電子音に、私の体が跳ね上がる。
聞き慣れたそのメロディーは、肩に掛けていた私の鞄の中から発せられたものだった。
っだ~っ! なんでこのタイミングで携帯が鳴るのよ~!
しかし私のそんな気など知る由もない携帯は、相変わらずけたたましくその音を響かせている。
慌てて鞄の中から携帯を取り出し、停止ボタンを押したのだが……。
やばい。今の音、絶対工藤さんにも聞こえちゃってるよね!? 私がここにいるのバレちゃったかなぁ!?
どうか気付かれていませんように、と心の中で祈りつつ、そっと視線を携帯から教室内へと移す。
バチンッ
「あ……」
しかしそんな私の淡い願いは脆くも崩れ去り、見事に驚いた顔の工藤さんと視線がぶつかってしまった。
どどどど、どうしようっ!
どうにもならないこの状況と、覗き見をしていたという後ろめたさから、一斉に嫌な汗が身体中から溢れ出す。
このまま逃げるのも絶対おかしいし、かといってここにいるのはもっと変だしっ。
焦る頭をフル回転させて考えるものの、案の定ポンコツな私の頭脳では一向に妙案は浮かんでこない。
こうなったら仕方ない……。え~いっ、ままよ!
もうどうすることもできないと悟った私はついに覚悟を決め、そのまま勢いよく扉を開け教室内へ足を踏み入れた。

