「その日は他のヤツらと約束すんなよ」
「え……?」
一瞬自分の耳を疑う私。
今、何て言った?
予想外の桐生君の言葉に驚いてガバッと顔を上げると、念を押すかのように再び桐生君が呟いた。
「七瀬が俺以外の男と幸せになるなんて、考えたくないからな」
「……」
「星、一緒に見よう」
「桐生君……」
思いがけない桐生君の言葉に、胸がジンと熱くなる。
「まぁジンクスなんかに頼らなくても、俺達はずっと一緒だけどな」
「……っ!」
そう言ってどことなく恥ずかしそうに苦笑する桐生君。
私はそんな桐生君の大きな背中に再び顔をすり寄せると、腰に回していた腕にギュッと力をこめた。
「うんっ! 絶対、ぜ~ったい一緒に見るっ! 約束、ねっ!」
「あぁ、約束な」
先程まであんなに沈んでいた私の心が、嘘のようにウキウキと煌めき出す。
桐生君のちょっとした一言でこんなにも一喜一憂してしまうなんて、やはり予想以上に桐生君への想いは大きいのかもしれない。
「……桐生君。大好きだよ」
嬉しい気持ちが溢れ出し、私は目を閉じ小さな声でそっと呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
「ん~ん! 何でもな~いっ!」
エヘヘ、と笑みをこぼしながら不思議そうにしている桐生君に返事を返す。
―― 桐生君、ほんとに……大好き……
再び瞳を閉じ、もう一度心の中でそう呟く。
明日も明後日もその次の日も……ずっとずっとこの幸せが続くことを願いながら……。

