キスから始まる方程式



「もうその辺でやめとけって」

「えっ!? で、でも冬真っ」

「そいつを殴ったって、キレイなお前の手が傷付くだけだろ?」

「冬真……!」



歯が浮くようなキザなセリフで男の子になだめられ、真っ赤になった女の子がようやく振り上げた腕を下ろす。



「ほら行くぞっ」



男の子は涼しい顔でそう言い放ち、横目で私を一瞥したあと、何事もなかったようにスタスタと歩いて行ってしまった。



「えっ!?待ってよ、冬真~っ」



置いて行かれておろおろとする取り巻き達。



「今日のところは冬真に免じて見逃してあげるけど、次に何かあったらただじゃおかないから!」



再び私を睨みつけながら、いかにもな捨て台詞を吐き「行こっ」と互いに示し合わせながらゾロゾロと走り去って行った。