やっぱり男の子って、噂とかジンクスとかってあんまり興味ないのかな……。
桐生君の背中に額を押し当て、むうっと唇を尖らせる。
初めはガッカリした気持ちが大きかったが、次第になんとも言えない寂しさが胸の奥からこみ上げてきた。
そういえば、付き合い始めた当初は桐生君に押されっぱなしだったけれど、よくよく考えてみると、今はむしろ私の方が桐生君にハマってしまっているような気がする。
『好きになった方が負け』という恋愛論があるが、今まさに私自身がその定理にピッタリ当てはまっているのかもしれない。
そんなことを鬱々と考えていると、後ろ向きな妄想ばかりがどんどん頭の中に浮かんできた。
そもそも桐生君て、ジンクスのこと知ってるのかなぁ?
うちの学校の生徒なら知ってて当たり前って思ってたけど、よくよく考えてみるとそれってば、あくまでも女の子の間では有名ってだけかもしれないし……。
でもでも、さっき『男はだいたい興味ないんじゃないか』って言ってたよなぁ。
ってことはつまり、知ってはいるけどやっぱりそんなのどうでもいいってこと?
誰も止めてくれないので、どす黒い妄想は更に膨らんで行く。
はっ! もしかして桐生君てば、去年か一昨年の段階で既に誰か他の女の子と一緒に七夕祭を過ごしてたりして!?
あれだけモテる桐生君のことだもん。普通女の子から誘われないはずないよね!?
先程よりも更にどんよりとした気持ちが、私の心を包み込む。
完全に意気消沈して桐生君の背でひとりうな垂れていると、まるでそんな私の気持ちを察したかのように桐生君が口を開いた。

