「ねねっ、そういえばもうすぐ七夕祭だね!」
「七夕祭……? あぁ、そういえばそんな行事あったっけ」
私のハイテンションな声とは裏腹に、返ってきたのはなんとも興味なさげな桐生君の声。
無理もない。
七夕祭で盛り上がるのは基本女の子ばかりで、恐らく男の子は面倒だと思っている生徒のほうが圧倒的に多いだろう。
そうなった所以は、“七夕の夜に学校で天体観測をする”という七夕祭本来の趣旨から外れたところにある。
“七夕祭を一緒に過ごした男女は永遠に結ばれる”という、いかにも少女漫画に出て来そうななんとも乙女チックなジンクスが、代々生徒達の間で囁かれているせいだ。
おまじないや占いの類が大好きな女子高生達にとっては騒がずにはいられない、まさにクリスマスやバレンタインデーに匹敵するほどの大イベントといえるだろう。
「むぅ……。桐生君、七夕祭あんまり興味ないの?」
「興味……、ねぇ……。ん~……俺に限らず、男はだいたい興味ないんじゃないか?」
桐生君も男の子なのだから、そういったものにあまり興味がないだろうことはある程度覚悟していたけれど……。
ここまで他人事のように言われると、そのジンクスを真に受け桐生君と過ごすことを内心楽しみにしていた私は、なんだか妙に気恥ずかしくなってきた。

