「あっ! 今七瀬、俺がこれに乗ってる姿想像して笑っただろっ」

「……っ、違う違うっ。そうじゃなくてっ」



初めはなんだか嬉しくて笑っていたのだが、そう言われると実際に想像してしまい、今度は違う意味で笑いがこみ上げてきた。



「んなに笑うんじゃねーよっ。俺だって恥ずかしいの我慢して乗ってきたんだからよ」

「ぷ……っ、だ、だって……っ」



笑ってはいけないと思えば思う程おかしくなってしまい、まるでツボにハマってしまったかのようになかなか止まらない。


そんな様子を見て桐生君は私の頭に手を置き、撫でるようにグシャグシャと掻き乱してきた。



「これ以上笑うヤツは、もう乗せてやんねーからな」

「……っ、ごめんごめん、もう笑わないから……っ」



唇を尖らせながら拗ねた目で、桐生君が私を見つめる。


さすがに罪悪感を感じた私は、なんとか競り上がってくる笑いをグッとこらえ「じゃあ、よろしくお願いします」と改めて頭を下げた。



「おうっ、任せとけっ!」



さっきまでの不満顔はどこへやら、桐生君の表情が途端に自信満々なものへと変わる。


そんな桐生君にまたもや胸がキュンとなるのを感じながら、痛む左足に気を付けつつ自転車の荷台に飛び乗った。