どれくらい時が経っただろうか……?
私にはとてつもなく長い時間のことのように思えたが、もしかしたら実際は数十秒……いや、ほんの数秒のことでしかなかったのかもしれない。
「か……ける……?」
ようやくのことで絞り出した私の言葉にビクッと体を震わせた翔が、慌てて私の体を両手で引き離した。
「悪いっ……」
「え……?」
真っ赤になりながら手の平で口もとを押さえ、私から顔を背ける翔。
なんで翔が謝るの? よろけて倒れそうになった私を助けてくれたのに……。
……それとも……、そのあと抱きしめられたように感じたのは……私の気のせいじゃなかったってこと……?
いやいや、そんなこと天地がひっくり返っても絶対ありえないからと、自らツッコミを入れる私。
だって、本当にあるわけがない。
つい半年前まで心の底から願っていた
―― そんな夢のようなこと……
「あの……っ、えっと……」
なんと言ったらよいかわからず、ひたすら目を泳がせながら立ち尽くす。
本当は事の真意を確かめたかったのだけれど、とてもそれを自分から切り出す勇気など私にはなかった。

