キスから始まる方程式



「おまっ、そんな無理に起き上がったら……っ」



ズキンッ



「っつ!!」



翔の焦りの声と同時に左足首に走った鋭い痛み。


咄嗟に右足で体重を支えることができずバランスを崩した私は、再びその場にドスンと尻餅をついてしまった。



い……ったたぁ……っ! ……今の痛み。もしかして、足挫いたかも……。



おそらく地面に叩きつけられた時に左足を捻ったのだろう。


途端に私の顔からサーッと血の気が引く。


どうしようという思いが瞬時に頭の中を駆け巡った。



「ばっか! だから言ったろ!?」



怒鳴りながら慌てて翔が私のそばに駆け寄ってくる。


口でこそ怒っているふうに聞こえるが、眉間には深いしわが刻まれ、その表情は心配そうにクシャリと歪んでいた。



……だめだ。やっぱりこれ以上翔に迷惑かけられない……。



避けてまで私との距離を置きたいと思っている翔だけれど、昔からの性格を考えると、私がケガをしていることを知ったらきっと放ってはおけなくなる。


絶体絶命のピンチを救ってもらっただけでも、もう十分過ぎるほどありがたいのだから、これ以上彼に頼るわけにはいかない。


結局悩んだ末に私は、精一杯笑顔を取り繕い明るい声で翔に言い放った。