「か……ける……?」
「っ! 七瀬、大丈夫か!?」
思いもよらない人物からの助けに、おもわずドクンッと心臓が跳ね上がる。
なな、なんで翔がここに!?
あまりにも驚いて私が倒れたまま固まっていると、ひとりでは起きられないと勘違いしたのか、翔が大きな手を私の背中に回してゆっくりと上体を起こしてくれた。
「翔…………ど……して……、ここに……?」
驚きに目を見開いて、相変わらず固まったまま翔を凝視する私。
翔はそんな私からなんとなく気まずげに視線を逸らすと、先程とは対照的な小さな声で呟いた。
「その……部活に行く途中で七瀬が女達に付いて行く姿見かけて……。
すぐその後ろをあんまいい噂聞かない奴らが大人数で追いかけて行くし……。
それで……ちょっと気になって……」
まるで照れ隠しのように鼻の下を右手で擦りながら話す翔。
よくよく見てみると、額からは滝のような汗が幾筋も頬を伝い、顎からポタポタと滴り落ちていた。
翔……ここまで一生懸命走ってきてくれたんだ……。
あれだけ私のことを避けていた翔がここまでしてくれたのかと思うと、切なくて胸がキュッとなる。
「あ……りがと」
それでもなんとかお礼の言葉を絞り出すと、もうこれ以上翔に迷惑をかけられないと思った私は、まだところどころ痛む体を無視し強引に立ち上がった。

