「お前ら何やってんだ!!」
えっ!?
まさに拳が振り落されようとしたその瞬間、突然誰かが遠くで怒鳴る声が耳に入った。
「誰か来た!」
「ちょっ、やばくない!?」
先程までの威勢はどこへやら、途端におたおたと慌てだす女子生徒達。
リーダーの女の子もさすがにマズイと思ったのか、憎々しげに「チッ」と舌打ちをすると、掴んでいた私の胸ぐらを投げ捨てるように地面へと叩きつけた。
「てんめーっ! 待ちやがれっ!!」
剛速球の勢いで走り寄ってくる足音に弾かれるようにして、私を取り巻いていた女子生徒達の足音がこれまた疾風のごとく遠のいて行く。
「げほっ!! げほげほっ! ……ごふっ……っ」
ようやく肺に入ってきた酸素をうまく取り込むことができなくて、私はその場に横向きに倒れたまま、背中を丸めて大きく咳き込んだ。
「大丈夫かっ!?」
聞かれているこちらが逆に心配してしまうくらい鬼気迫る声が、頭上から聞こえてくる。
私、助かったんだ……。
「けほっ……大……丈夫……こほっ……っ」
咳き込みながらも助けてくれた相手になんとか返事を返し、ギュッと閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
しかし、まだ幾分視界がボヤケて見える。
何度か目をパチパチさせると、ようやく目の前がクリアになってきた。
鮮明になるにつれ、くっきりと浮かび上がる人の顔。
「……っ!?」
よく見るとそれは、怒りに顔を歪めながらも心配そうに私を覗き込む、幼なじみの翔だった。

