キスから始まる方程式



ざっと見たところ、目の前に立ちはだかっている人数は7、8人程だろうか。



それに先程私を呼び出した3人を加えると、およそ10人……。



女子生徒が3人くらいならばなんとでもなるのだが、さすがに10人ともなるとそうはいかない。


ここは真っ向勝負は避けて、おとなしく逃げに徹するべきだろう。



しかし生憎、もともと来た道はしっかりと彼女達によって塞がれてしまっている。


両側は私の身長よりも高いであろうフェンスと、合宿棟の壁に阻まれてしまっている為どうすることもできない。



残るは一番可能性がありそうな、3人の女子生徒がいる私の背後か……。



そう思った時、まるで私の考えを察したかのようにリーダーらしき女の子が残りの女子生徒達に目配せをした。


それを合図に私の周りをぐるりと取り囲むようにして移動する女子生徒達。


絶対に私が逃げ出せないように、全ての退路が隙間なく塞がれてしまった。



これはちょっと……ほんとにヤバイかも……。



嫌な汗がツーッと一筋、頬を伝う。



さすがの私も、こうなってしまってはもうどうすることもできない。


こんな誰も寄りつかない場所でいくら助けを呼んだところで、きっと誰にも気付いてはもらえないだろう。


ひとけがなく死角なことが、好都合どころか逆に仇となる形となってしまった。



どうしたらいい? どうしたらこの場を切り抜けられる?



普段使わない部分の脳ミソもフル回転して考える。


しかし焦りもあってか、一向に名案など思い浮かばない。


そうしているうちに、リーダーの女の子がゆっくり私との距離をつめてきた。