内心、桐生君の工藤さんに対する本当の想いを知って、身を切られるほど辛い。
けれど嘘をつかずに真剣に話してくれている桐生君のためにも、どれだけ辛くても最後まできちんと聞き届けよう……、改めてそう思った。
ふうっ、と桐生君が一度呼吸を整える。
それを合図に、再び桐生君が口を開いた。
「凛は俺に言ったんだ……。『好きだけど、気持ちには応えられない』って……」
「え……?」
―― なんで……?
喉まで出かかった言葉をグッと呑み込む。
緊張に乾いた下唇をギュッと噛みしめ、そのあとに続く桐生君の言葉をじっと待った。
「納得できなくて問い詰めたら、『そばにいることもできない私じゃ、冬真を幸せにしてあげられないから』寂しそうな目をしてそう言ってた」
工藤さん……。
彼女の言葉から、桐生君への愛情の深さや優しさが手に取るように伝わってくる。
せっかく両想いなのに……それでもなお桐生君の幸せを願って身を引いた彼女。
それに比べて私は……。
今更ながらに自分の器の小ささに呆れ、恥ずかしさでいっぱいになった。
「でも俺はガキ過ぎて、凛の優しさにも気付かずそれでもいいからってくらいついたんだ。
そしたらあいつ……『じゃあ、いつか私がまた戻ってきた時にお互い気持ちが変わってなかったら……そしたらまた一から始めよう』って……」
それが俺が別れ際に聞いた凛の最後の言葉だった。……桐生君が苦しそうにそう呟いた。

