キスから始まる方程式



ゆっくりと片方の肩を引き寄せるようにして私の体を回転させる。


気が付くと私は、桐生君の顔を見上げる格好になっていた。



……やっぱりだめ! 顔見られないっ。



どうにも居たたまれなくてそのまま俯こうとする私。


そんな私の両頬を桐生君の大きな手のひらがフワリと包み込んだ。



「っ!」



まっすぐに私を見つめる桐生君の漆黒の瞳に私が映る。


吸い込まれるようにジッと見つめていると、切れ長の目がフっと細められ、優しい笑顔が私に降り注いだ。



「泣き虫」

「……っ」

「って……、泣かせてるのは俺か……」

「え……?」



自嘲気味にクシャリと顔を歪めると、桐生君はそっと私の額に口づけをした。


続けて瞼に、頬に、鼻の頭に……まるで壊れ物でも扱うように、大事に何度も何度も優しく唇を落としてゆく。


唇が触れるたびに言いようのない充足感が体中を満たし、カラカラだった私の心がどんどん潤って行くのがわかった。