「っ！？ 七瀬、泣いてるの？」
「……っ」
ポタリと桐生君の手の甲に落ちた雫に、驚いたように桐生君が声をあげる。
しかしとにかく自分が情けなくて許せなかった私は、下を俯いたまま否定するように大きくかぶりを振った。
「違っ……、泣いて……なんか……っ」
「七瀬……？」
心配するような声音で桐生君が私の名前を呼ぶ。
けれど今の私に泣く権利などない気がして、奥歯にグッと力を入れ必死に嗚咽を噛み殺した。
「七瀬、こっち向いて？」
「っ！ だ……めっ……っ」
こんな情けない顔、桐生君には見られたくない。
再び全力で顔を左右に振る私。
すると次の瞬間、私を包んでいた腕がほどかれ温かかった桐生君の体がスッと離れた。
……っ！？ 離れてっちゃう。 私、呆れられちゃった……？
苦い物が胸にこみ上げる。
たった今反省したばかりなのに、またやってしまった。
そう思った時、離れたはずの桐生君の手が私の肩をそっと掴んだ。
