キスから始まる方程式




「七瀬、座んないの?」

「えっ!? あぁっ! うんっ、座る座る!」



相変わらずの私の動揺っぷりに、桐生君が更に目を細めてクックックッと笑う。



あっ……!



ドキンッ



久しぶりに見た大好きないつもの笑顔に鼓動が跳ね上がる。


切ないくらいに胸がキュンとなって、想いが溢れ出しそうだった。



その笑顔反則だってば……!!



ドキドキする胸を押さえつつ、落とした鞄を拾い上げ桐生君の隣に移動する。


けれど腰を下ろそうとした瞬間、一週間前桐生君から手を払い除けられたことが頭をよぎった。




ペタン



なんとなく気が引けて、いつもより桐生君と間を空けて隣に座る私。


そんな私を不思議そうに見つめる桐生君の視線が気まずくて、私のほうから話を切り出した。



「その……なんでわざわざ麻優に協力してもらったの? 言ってくれればちゃんと早く来たのに」

「ん~……。なんかさ、最近七瀬と話しようとしても邪魔ばっか入るからさ……」



そう言ってばつが悪げに鼻の頭をポリポリと掻く桐生君。



“邪魔”? 邪魔って……工藤さんのことかな……?



桐生君の意外な発言に目を丸くする私。



「邪魔って……」



気になって確かめようとした時、それを遮るようにして桐生君が問いかけてきた。