「じゃあ私とおあいこだ」
「あいこ?」
桐生君のフワフワの髪と甘いシャンプーの香りが、私の頬を優しくくすぐる。
「うんっ! だって私もさっき、桐生君が女の子達に囲まれてるの見てヤキモチ妬いちゃったもん」
「っ!」
「だから今回はお互いさまだよ。……ねっ?」
「……七瀬……」
ピンク色に頬を染めた桐生君が、ようやく顔を上げて私を見下ろした。
眉間にしわを寄せ、切なそうに目を細めて私を見つめる桐生君に胸がキュンとなる。
そんな桐生君を安心させたくてニッコリ微笑んでみせると、桐生君は瞼をキュッと閉じそのまま私を強く抱きしめてくれた。
「やっぱ俺……、七瀬のこと離したくない」
熱い息と共に降り注ぐ、桐生君の切ない声。
それに応えるように、私も桐生君の背に回した手で制服をギュッと握りしめた。
「うん……離さないでね……。 ずっとずーっと、そばにいてね……」
「あぁ……」
神様……。
翔と仲直りしたいとか、前みたいな幼なじみに戻りたいだとか……そんなこともう言わないから……。
だから……だからお願い……。
どうかせめてこの幸せを、私から奪わないで ―― ……