「10時50分かぁ……」
チューリップ形の壁掛け時計に目をやると、約束の11時まであと10分をきっていた。
再び私の中でなんともいえない緊張感が高まり、おもわずベッドの上に腰をおろす。
「どうしよう……っ。あと数十分後には桐生君がこの部屋にいるんだよね」
落ち着かなくて手近にあった水玉柄のクッションを引き寄せ、ギュッと抱きしめる。
すると、不意に先日の麻優の“大人の階段”発言が頭をかすめた。
そんな……、まさかね……。私達まだ高校生だし、それに今日はお母さんも家にいるし……。
いくら桐生君でも、そんな大胆なことしない……よね……。
でももしかしたら……という思いが、ドキドキと速度を増して行く鼓動に更に拍車をかける。
「あ~っもうっ! 麻優が変なこと言うから!」
緊張しすぎて息をすることさえ苦しくなり、抱えていたクッションにボスンと顔を埋めた。
ピンポーン
「っ!!」
そんなドキドキマックス状態の中、室内に鳴り響くドアチャイムの電子音。
「桐生君だ!」
慌ててベッドにクッションを放り投げピョンと立ち上がると、桐生君の待つ階下へと駆け出した。

