「それでどうしたの?」
「……っ。 用事がなけりゃ、七瀬に会いに来たらダメなのかよ」
「っ! ななな、何言ってんの!?」
廊下でいきなりとんでもないことを言い出す桐生君に、真っ赤になって目を白黒させる私。
そんな私の反応を見て満足したのか、桐生君が「まぁそれはおいといて」とあっさりと話題を変えてきた。
「七瀬、日本史の教科書持ってない? 次日本史の授業なんだけどすっかり忘れちまってさ」
「日本史? えっと……昨日授業あって置きっぱなしにしといたから多分あると思うけど」
「よっしゃ! ラッキ~」
「うん、ちょっと待ってね」
なんだ、教科書かぁ。ビックリしたぁ……っ。
まだドキドキする胸を抑えながら、自分の席へと慌てて戻る。
「えっと日本史日本史っと……」
ガサガサと机の中を探すのだが、目的の日本史の教科書がなかなか見つからない。
「あっれ~? おっかしいなぁ……」
家に持ち帰ったわけないんだけどなぁ……。
小首を傾げながら念のため鞄の中も確認してみる。
「やっぱりない……」
そんな私の様子を見ていた麻優が、不思議そうに声をかけてきた。

