「きっ、桐生君! 近いっ!! 離してってば」

「やだ」

「やだって、また何言ってんのっ!?」



なんとか腕から逃れようとジタバタともがく私を、桐生君が更に強い力で制止する。


そして身構える間もなく再び私の顔へとゆっくり顔を近付けてきた。



っ!? またキスされる!?



どうすることもできなくてギュッと目を瞑る私。



……って、あれ……?



しかしそのまましばらく固まっていたのだが、一向に何かされる様子がない。



どうしよう……。目……開けてみようかな……。



悩んだ末におそるおそる目を開けてみる。


するとそこには、顔がすぐに触れてしまうくらいの超至近距離で、したり顔の桐生君が私の顔を覗き込んでいたのだった。



「っ!?」



驚いて目を見開く私。


そんな私に桐生君は満足げな笑みをもらしながら



「キスされると思った?」

「っ!」

「七瀬可愛い」

「っ!!」



真っ赤になった私の耳元に唇を寄せて、妖艶な声でそう囁いたのだった。