こ、この感触はまさか……!?



先日抱きつかれた時と同じ感覚に、私の表情がより一層曇る。



「七瀬、今日も寂しそうな背中してっけど……そんなに俺に会えなくて寂しかったのか?」

「は、はい~っ?」



やっぱり……。



朝っぱらからわけのわからないことを言っているこの男……、桐生冬真に唖然とする私。


そんな抱きついたまま一向に離れようとしない桐生君の手の甲を、キュッとつねりあげた。



「いって! なにすんだよっ」

「『なにすんだよ』はこっちの台詞っ!」



慌てて抱きついていた腕を離し、つねられた部分にふーふーと息を吹きかけながら桐生君が抗議してくる。



「毎度毎度、いちいち抱きついてこないでよねっ」

「それは、お前があまりにも寂しそうにしてるから……」

「だーかーらー、私はちっとも寂しくなんかありません!」



私の大きな声に、周囲の視線が一斉に集中する。



あ……、しまった……。



皆からジロジロと好奇の目で見られ恥ずかしくなった私は、まだ手の甲をさすっている桐生君を置いてそのままスタスタと歩き始めた。