「……なんで……理由聞かないの?」



なんとなく気まずくて、黙ったまま座っている桐生君に問いかける。



「……まぁ、何があったかくらいだいたい想像つくからな」

「っ!」



右手に持ったガトーショコラに視線を落としながら桐生君が呟いた。



「ど、どうせバカみたいって思ってるんでしょ……」

「……」

「叶いもしない恋いつまでも追っかけて、勝手に傷付いて勝手に泣いてっ……。
自業自得だって本当は思ってるんでしょ!?」

「……」



一方的に声を荒げる私。


そんな私にしばしの沈黙のあと、桐生君がおもむろに口を開いた。



「べつに、いいんじゃねーの」

「え……?」

「人間なんてそう簡単にコロコロ気持ち変えるなんてできねーんだし。それがマジで好きになったヤツなら尚更だろ?」

「……っ!」



今まで一度も見たことがないような真面目な顔で呟いたかと思うと、そのまま桐生君がガトーショコラを口に放り込んだ。