「き、桐生君!?」
なんでここに!?
予期せぬ桐生君の登場に動揺する私。
確かこの階段の下り口には、立ち入り禁止の看板が出ていたはずなのだが……。
「どうして……? ここ立ち入り禁止なのに……」
「お前だって立ち入り禁止なのに入ってんじゃん」
「う……。まぁ、それは……そうだけど……」
「それに……」
「?」
包みからガトーショコラをひとつ掴み、チラリと私を横目で見る。
「教室の窓から、お前が泣きそうな顔して廊下歩いてるのが見えたからさ……」
「っ!」
見られてたっ!!
先程まで自分が泣いていたことを思い出し、慌ててゴシゴシと制服の袖で涙を拭う。
あんな情けない顔を見られていたのかと思うと、恥ずかしくて顔が上げられない。
そんな私の気持ちなどおかまいなしに、桐生君が隣に腰を下ろした。

