キスから始まる方程式



「お前、こんなところで何してんだよっ」



まるで私がここにいると都合が悪いとでも言うように、焦ったような口調で話す翔。



「えっとあの、その……ちょっと人を探してて……」

「人……? 人って……もしかしてあいつか?」

「?」



あいつ? 誰のこと言ってるんだろう?


なんとなく不機嫌そうに翔が目をそらす。



「あいつっていえば、七瀬の新しい男に決まってんだろ」

「っ!」

「今日、バレンタインだから……あいつにチョコやるんで探してたんだろ……?」

「な……んで……」



なんで……そんなこと言うの……?


私は……私は、翔にあげるために一生懸命作って、一生懸命探してたのに……。



内心、今すぐ泣いてしまいそうなくらい悲しい私に、なおも翔が言葉を続けてきた。