キスから始まる方程式



あれって……もしかして!



2月14日に女の子が男の子に渡すものなど、どう考えたってひとつしかない。


間違いなくバレンタインのプレゼントだろう。



「お、美味しいかどうかわからないけど、ガトーショコラ作ったの!」

「南條……」

「そ、それでね、すぐ食べられるようにべつに包装してきたやつがあるから……よかったら食べてみて……?」



持っていた紙袋から、透明の小さなビニールに個別に入れられたガトーショコラを、いそいそと取り出す南條さん。


そのビニール袋の口にも、可愛らしいピンクのリボンが施されていた。



「すっげ! これ、南條ひとりで作ったのか?」

「うん……。あんまり上手にできなかったけど……」

「うっそだろ? 見た目もほんと、売り物みたいだぜ?」



そう言って翔はビニールからガトーショコラを取り出し、驚き顔のままそれを口へと運んだ。