「ここにいなかったら、また出直すしかないか……」
腕時計に目を落とし時間を確認する。
昼休みも残すところあと15分ほどだ。
「どうかいますようにっ」
祈るような気持ちで、校舎の陰から中庭を覗き込む。
するとそこには、運よく翔がひとりでいたのだった。
よかった~! しかもひとりだし、今が絶好のチャ~ンス!
ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、はやる心を落ち着かせるようにひとつ深呼吸をする。
「よしっ」と改めて気合を入れ直し、翔に向かって足を一歩踏み出した。
「かけ……」
「風間君!」
「っ!?」
その時、私の声と重なるようにして翔を呼ぶ女の子の声が聞こえてきた。
驚いた私は、出しかけた足を踏みとどめ咄嗟に校舎の陰に身を隠す。
そこから声のした方を見やると、私のいる場所とは逆の通路から女の子が翔の方へと駆け寄ってきたのだった。

