「ごめんごめん。あまりにも七瀬が必死だったからつい」
「んも~! 麻優ってば冗談きつすぎだよっ」
「だからごめんって。私の大事な七瀬が、風間君のことば~っかり考えてるから、ちょっと妬けちゃったんだもん」
「麻優……」
先程とは一転、エヘヘと天使のような笑みを浮かべて麻優が愛らしく呟く。
「んも~、なんて可愛いヤツなの!」
「キャッ」
あまりの麻優の可愛さに再び私は立ち上がり、相向かいの席に座っている麻優の頭を抱きしめた。
「よしよし、ごめんね。私は麻優がいっちばん大事だからね」
「え~っ? 本当?」
「うんうん、ほんとほんと」
人目も気にせず、麻優の頭をよしよしと愛でるように撫でる。
あれ……?
不意にそんな私の視界の端に、窓の外をひとりで歩く翔の姿が映った。
か、翔だ! しかもひとりだし……チャンスかも!
「あれ? 七瀬?」
「ごめん、麻優っ! 私急用できたからちょっと行ってくる!」
「え……えぇっ? ちょっと、七瀬~っ」
慌ててお弁当を片付けた私は、嘆く麻優に何度もごめんと謝り、ガトーショコラが入った手提げ袋を抱きしめ翔のもとへと駆け出したのだった。

