「七瀬~。いくらバレンタインだからって、ボーっとし過ぎだよ~」
「っ! べつに私、バレンタインだからって惚けてなんか……っ」
「うっそ~? だって今、風間君のこと考えてたでしょ?」
「なっ!? そ、そんなことないって」
「本当に~?」と、疑うような眼差しで私を見つめる麻優。
「あっ、噂をすればあんなところに風間君が!」
「えっ!? 翔!?」
ガタンッと、勢いよくその場に立ち上がり、麻優が指さした方を慌てて振り返った。
「あ、ごめ~ん、見間違いだったみたい」
「あ……。う゛~……」
キシシと、イタズラっ子みたいな笑いを浮かべ、麻優がペロリと舌を出す。
そんな麻優を恨めし気に睨みつつ、真っ赤になりながら私も静かに腰を下ろした。

