奏多には、私の方が遅くなると伝えている。


放課後、どうしても保健室に寄りたいのだ。



私が保健室に、行きたい理由。



それは、一つ年上の、先輩。


八木青藍に、会いたいがため。



保健室の、扉を開く、その瞬間。


くっと口角だけを上げて、笑みを消す。



「よう。」


「ども。」



私は定位置に鞄を置き、椅子に座る。


少し不機嫌そうな雰囲気を醸し出して、髪をかき上げた。


そうでもしないと、緩んでしまう。


穏やかで、――――。


全てを包み込んでくれるような、この優しい笑顔に対抗するには、私はずっと張り詰めてなければならない。




八木青藍。



私の、―――。



今、一番気になる人。




彼がいるから。



私は安定したメンタルでいられるんだと思う。