「…帰るわ。」



「ああ。」



そんな目で、見んなよ…。


お前にまでそんな顔、されたら―――。



「…奏多。」



リビングのドアに、手をかけていた奏多の動きが止まる。


振り返った表情に、あいつがここに来た理由を察した。



「…3か月、だったって……?」


「…ああ。

本人すら気付いてなかったらしい。」


「……っ。」



脳が、考えることを拒否しているのに。



それでも---。


心が痛くて、痛くて。


飛鳥の顔が、目の前にチラついて…。



俺だけしか知らないって、思ってた。


あんな女の顔、俺しか知らないって。