ぶくぶくと、奇妙に泡立つ壷。
私はキッチンの掃除をしているのに、その壷から変な匂いがして、掃除する気分が薄れる。


“彼”の首根っこを掴んで、耳もとで呟く。


「よそでやってくんない? クサイんだけど」


すると彼は悪い目つきをさらに悪くして、私を睨む。


「イチゴ、邪魔すんなよー! あとはトカゲの尻尾を入れたら完成なんだよ!!」


ジタバタと暴れる彼をうっとおしく思いながらため息をついた。


私の名前はイチゴ。
職業は魔女。


彼の名はチョコ。
職業は悪魔。


「トカゲの尻尾なんて無いし」


私のキッチンの近くにある、魔女の薬を作る材料を勝手に使っては壷に入れるチョコ。
片手に私の本を持っている。


悪魔のくせに、魔女の薬を作るのが趣味らしい。


「はー? お前、それでも魔女かよ」


「文句あんなら帰って」


「お。 変わりに人間の腕でもいいって。 …って、これもねーのかよ。 イチゴ、お前の腕よこせ」


「腕無かったら困るんだけど。 自分の腕入れたら? ちぎってあげる」


私は、チョコの右腕をしっかり掴んだ。