少年と俺との距離はわずか数センチ。全く見覚えのない顔に少し戸惑った。

…………誰だ?知らない人……だよな。
それとも俺が忘れてるだけ?


見た目は俺と同い年くらいで色白に黒髪。そしてかなりの細身だった。


『あの、聞きたい事があるんですけど』

そう言って少年は手に持っていた紙を俺に差し出した。


あぁ、道にでも迷ったのかな?


『なんですか?』

俺はその紙を覗きこんだ。

それは紙でも地図でもなくて1枚の写真。
写真に映っていたのは額に入れられた絵だった。


どこかの景色?いや、景色というより街だ。


『え、えっと………』

俺は言葉に詰まった。

絵を見せられてもこれがなんだって言うんだ?


『この絵知ってますか?』


気のせいかな。少年の視線が少し痛い。なんでも見透かされてるような何かを探られてるようなそんな感じ。


『………いや、知らないです…けど』


もしかして有名な絵なのかな。興味がないから全然知らないけど。すると少年は間を空けずに再び質問してきた。


『それならこの絵がどこにあるか知ってます?』


『………どこって、えっと……あるか分からないけどここら辺で絵って言ったら隣町に美術館があるけど……』


俺が曖昧に答えると少年はニコリと笑って、
『そうですか。有難うございました』と丁寧に頭を下げた。