『うーん………分かんない』
ゲンタはさらりと言った。しかし『でも…』とまだ続きがあるみたいだ。
『でも?』
『でも大切な人が居たら、俺はこっちの世界に来てないんじゃないかな』
何故か胸がズキズキ傷む。
この世界に来て辛い事、悲しい事を忘れて、
心から夢の国と信じてる住人達。
だけどいくら忘れても、いくら思い出が消えても、
痛みや苦しさから逃げてきたという事実は忘れる事がない。
ゲンタは大切な人が居たらここには来てないって
言ったけど、本当にそうなのかな?
例えいなかったとしても、これから出会う人だっている。
でもここにいたら…………………
これから出会うはずだった人にさえ会う事は出来ない。
『じゃぁさ………』
俺は意を決してある賭けに出た。
『ここに線があったとして……』と足で土を削り、ゲンタとの間に線を引いた。そして、
『ゲンタが居る方が今の世界。俺が居る方が元の世界。
もし俺がこっちに来いって言ったらゲンタは来る?』
こんな事急に言われて、ゲンタは俺を変な奴だと思うだろう。
ゲンタの返事を待つ間、心臓がドクンドクンと波打っていた。
『行かない』
悲しい鼓動が俺に鳴り響く。
『…………なんで?』
『だってそっちに行っても、どうやって生きていけばいいか分かんないから』
ゲンタの目は真っ直ぐ俺を見つめていた。



