だってこの世界に居ると記憶が無くなっていくから。だからこうしてシオリの過去の話しを聞く事はもうないかもしれない。
シオリはここに居れば、自分が親に捨てられた事実を忘れて生きていく事が出来る。
【産まれてきたからこうして会えたじゃん。俺達】
さっき言った言葉が、
俺の答えだったのかもしれない。
大人が居なかったら、親が居なかったら、
俺達は今ここにいない。
そんな簡単な事になんで今まで気付かなかったんだろう?
恨みや憎しみの前に、こんな当たり前の事。
“産んでくれてありがとう”
そんな感謝の気持ちをどうして俺は持てなかったんだろうか。
いつか元の世界に戻れたら、
おふくろにちゃんと伝えよう。
でも、今のこの気持ちも………………
この世界にいたら俺は忘れてしまうかな。
シオリはその後『ありがとう』と一言だけ言って笑顔になった。誰にも言えなかった事を打ち明けてホッとしたのか、シオリは少しウトウトし始めていた
『眠いの?』
時計を見ると夜中の2時を過ぎていた。
『うーん……遊んでると眠くならないのに今日はちょっと』
まぁ、今日は色々ありすぎたしな。
俺もまだこっちの生活のサイクルに慣れてないから、この時間は特に眠気が襲ってくる。
『じぁ………寝る?』
『うん………え?』



