涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


私は無言になる。


考えていた。

上條君の好意を、傷付けずに断る言い方を。



こんな風になった責任が、上條君にあるとは思わない。


彼は悪くない。

それでも、困っているのは正直な気持ち。


加奈に言われた通り、ちゃんと言った方がいいと、思い直していた。



言葉を選び、慎重に話し出す。



「上條君… あのね…
私を想ってくれて、ありがとう。

嬉しいよ、すごく嬉しい。

でもね、私……」




“でもね”の後は、
こう言おうと思っていた。


私が夕凪を好きな気持ちは変えられない。


どんなに攻められても、
それだけは崩せないよと。



言いたい言葉は、最後まで言わせて貰えなかった。


途中で、待ったをかけられる。


上條君は私の言葉を遮り、慌てて言った。



「待って!言わないで!
もう少し、頑張らせて。

俺、攻めるばかりじゃなく、君を守るから。

二度とこんな目に合わせないから。


貝原はズルイよ。

アイツは何年分もの君を知っているのに、俺はまだ3ヶ月なんだ。

俺にも、頑張る時間をくれよ…」