涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


この場所に、昼休みに来る生徒はいない。


この水飲み場と廊下は、
移動教室でしか使われない。



誰も来ないはずなのに…


突然駆け込んだのは、上條君だった。



彼は息を乱していた。


驚いている私に、
「やっと見つけた」
と不思議なことを言う。



加奈が上條君に知らせてくれて、校内を探し回っていたそうだ。



今まで笑っていた6人が黙り込んだ。



罰が悪そうな顔して俯く子や、
青ざめている子がいる。



上條君は宮田さんに歩み寄る。



「宮田…
お前、何やってんだよ…」



宮田さんは、目を逸らして何も言わない。


そんな彼女に、上條君の怒りが爆発した。



宮田さんのブラウスの胸倉を、片手で掴んだ。


衿元のリボンが外れ、床に落ちた。



今にも殴りそうな彼を見て、

私は慌てて、振り上げた右腕にしがみついた。