上條君の言葉が、良く分からなかった。
夕凪は子供っぽくない。
背も高くて、大人みたいに筋肉質で、
中学生の頃から高校生に間違われた。
私はまだまだ親に甘えているのに、
夕凪は甘えられる大人が側にいないから、小さな頃から何でも自分でやってきた。
夕凪がガキだと言われるのは、納得できない。
上條君に意見はしないけど、心の中で「違うよ」と思っていた。
そう考えているのは、顔に出ていたらしい。
上條君が少し笑った。
日焼けした顔に、白い歯が目立つ。
短い黒髪のサッカー少年の彼は、夕凪とは違う種類の格好良さがある。
上條君が言う。
「君の話しを聞いて、貝原が悪い奴じゃないのは分かったよ。ガキなだけ。
そういう奴は嫌いじゃないけど、
貝原だから、やっぱり嫌い」