上條君が近付いて来た。
一つ前の席の椅子に、後ろ向きに座る。
夕凪の机を挟み、私達は向かい合った。
上條君が言う。
「朝比奈さんを泣かせているのは、やっぱり貝原なんだね…」
目元はまだ濡れていた。
恥ずかしくて、両手で顔を覆い隠した。
上條君の溜息が聞こえた。
温かい手の平が頭に乗り、優しく慰めてくれた。
その手は髪を滑り、私の手首を掴む。
顔を隠していた手は、そっと外された。
戸惑いがちに上條君を見ると、彼は切なげに微笑んだ。
「聞かせて。何があったのか知りたいんだ。
貝原と君は、付き合っていたの?」
「付き合ってない… 友達だったの…
でも今は… 夕凪に大嫌いと言われて…
私が約束を守らなかったから…
全部、私が悪いの…」


