上條君に可愛いと言われたのは、二回目だ。
一度目は私を庇い、夕凪に向け言ってくれて、
今は…
今は本当に、そう思ってくれたのかも知れない。
私の顔が、途端に真っ赤になる。
「可愛い」なんて、面と向かい言ってくれるのは、
父や近所のおじさんおばさんくらい。
同じ歳の男の子に言われたのは初めてで、
どう言葉を返していいのか分からない。
真っ赤な顔で困る私。
上條君は目線をボールに落とし、照れたように笑っていた。
グラウンドからは、
「上條ー!サボるなー!」
と上級生の注意が聞こえた。
「やばっ、俺、戻るわ。
朝比奈さん、また明日」
上條君は、走って練習に戻る。
私もハッとして、バス停に向け走り出した。
バス時間は、15時半。
田舎に向けてのバスは、本数が少ない。
それを逃すと、次は1時間半後になってしまう。


