涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


上條君は一年生部員唯一のレギュラーだと聞いた。

下手なはずがない。



それでもゴールに向けて蹴ったというなら、

私の方に飛んで来るのは確かにおかしい。

角度にして、90度も違う。



上條君は自分を下手だと言い、ミスした原因を考え始めた。



格好つけたりしない彼は、爽やかで真面目で好感が持てる。



私に聞いても、サッカーに関してまるで分からないのに、

ミスした原因を尋ねるように分析しだすから、

可笑しくて、クスクス笑ってしまった。



笑う私を見て、上條君の手からボールが落ちた。



彼はフェンスを両手で握りしめ、日焼けした頬を赤く染めた。



「朝比奈さんは、笑っていた方がいいよ。

今の笑顔… 可愛かった…」