涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


サッカーボールが飛んできたのだ。



フェンスに当たっただけで、私にぶつかることはない。


それでも驚いて、
「キャア」と叫んでしまった。



男子が一人、フェンスの向こうから駆け寄ってきた。



「ごめん!大丈夫?」


そう言って、爽やかな汗を拭き私を見るのは、上條君。


前に夕凪に意見して、私をかばってくれたクラスメイトだ。



フェンス越しに、私達は向かい合った。



「あの… 驚いただけで…
何ともないのに、叫んでしまってごめんなさい」



「いや、俺の方こそノーコンでごめん。

ゴールに向けて蹴ったつもりが、変な方向に曲がっちゃって…

何でだろ?スパイク変えたばかりだから?

俺って、下手くそだな」