涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


見た目はすっかり変わってしまった夕凪だけど、

サーフィンに対するひた向きさは変わらない。



今朝も早くから海に入り、練習していた。



『俺、ケンさんみたいになりたい』


それは小学生の時から良く聞く、夕凪の言葉。



プロサーファーである私の父に、夕凪は憧れている。



小さな地元の大会は毎年出場し、いい成績を収めている。


いずれ、プロテストを受けるつもりなのだろう。



プロトライアルの合格率は、約2%。

かなり厳しい世界だけど、夕凪ならプロになれると信じている。



夕凪の強く美しい波乗りを頭に描き、ぼんやりしていると、


ガシャンと大きな音がして、目の前のフェンスが揺れた。