ザアザアと激しく降る雨は、
波音を消し、私を芯まで冷やして行く。



寒さに震えながらも、夕凪を待ち続けていた。



夕凪は、嘘が嫌いだ。


小さな頃、一度約束を忘れて、
一週間許してもらえなかった時がある。



嘘が嫌いな夕凪。

だから夕凪は、絶対ここに来る。



少し遅れているだけ…

待っているから。

夕凪が来るまで、ずっと待っているから。



だから……




二月の冷たい雨の中、

震える私を迎えに来たのは、夕凪ではなく父だった。



真っ暗闇に懐中電灯で照らされて、私を見つけた父は、

ホッとした後、激怒した。



夕凪が来るからと言っても、許してくれなかった。


父に手を引かれ、ずぶ濡れの私は、泣きながら帰るしかなかった。




―――――…